メキシコ、キューバと日本で活躍する八木啓代の新たなアルバム、Antes de ti
歌手、作家、活動家に加え通訳者でもある八木啓代は70年代にラテンアメリカ文化に熱中した。Víctor JaraやVioleta Parraといった歌手の歌を聴き、理解はできなかったが、彼らの音楽に親しみを感じていた。その証拠として、彼女のレコードにはLo profundo (1990), Se vive así (1992), Esta mujer (2002)、そしてLágrimas (2012)といった作品が挙げられる。これらはメキシコ並びにラテンアメリカの音楽に強く影響を受けたものである。
彼女の最新アルバムであるAntes de ti(あなたの前に)は、コヨアカン(Coyoacán)にあるメキシコ国立ポピュラーカルチャー博物館(Museo Nacional de las Culturas Populares)で披露された。
八木は大阪大学でスペイン語翻訳を学び、その後Conacytの奨学金で1983年にメキシコへ訪れた。翌年までグアナファト大学(Universidad de Guanajuato)で学び、それが彼女の人生を大きく変えることになる。
メキシコについてほとんど何も知らなかった。音楽に関しては、母親の影響で小さいころに聴いた、トリオのLos Panchosとマリアッチぐらいであった。グアナファトに着いたとき、メキシコには音楽の多様性があることに気づかされた。「グアナファトでは、あるグループの演奏を聴くために喫茶店へよく通っていた。ある日、ボーカリストが辞めることになった。その後、参加予定だったフェスティバルがあり、2曲一緒に歌わないかという誘いがきた。」と彼女は語る。
グアナファト大学で歌の講師をしている人がそのショーを見て、ベルカントの授業に呼んでくれた。「彼女は私を国立ベジャスアルテス機関の奨学金へ応募させたかった。だが、私は日本の大学での勉強のため、応募を断念することになった。」と語る。
その後、1986年にメキシコへ戻り、音楽関係の人びとと関係を持つようになる。Rafael Mendoza, Marcial Alejandro, Pablo Milanés, Silvio Rodríguez、さらにはレーベル会社、Ediciones PentagramaのディレクターであるModesto Lópezと知り合った。
それ以降から今日まで、彼女は自身の音楽キャリアと文学を結びつけている。レコーディングされた中には、ジャズやボレロ、その他のジャンルを混ぜ合わせたものがあり、フィクションや歴史小説(例えば、Mariはアメリカ合衆国のパナマ侵攻を扱ったもの)も執筆している。
八木がはじめてメキシコに訪れたのは1983年の時である。当初、彼女はキューバに対して多くの偏見を持っていた。60年代そして、70年代に育った八木はカリブの音楽に親しみを感じなかった。しかしながら、グアナファトでの知識が彼女をハバナへ駆り立て、旅を決意することになる。
「5日間滞在だった。道を歩き、メキシコへ戻った時には、再び戻る必要性を私は感じた。」と話す。そして、バックパッカーとして1987年に二か月間滞在した。キューバへ公式に訪れる初めての日本人でもあり、旅行者のためのガイドブックを書いた。
「キューバの環境が常に好きだった。90年代には、Havatampaというグループに参加し、レコーディングをした。」と彼女は語る。キューバとの関係性はあるが、彼女の曲は常にメキシコの動機があった。2年前、彼女の友人は八木が好きな国、メキシコに敬意を表してAntes de tiをレコーディングすることを提案したのだ。